夜勤の場合、とくに忙しくなる朝方からの記録が残ってしまいがちです。
夜勤の疲れが溜まった状態で書く記録は、効率が悪く時間がかかってしまう上に、記録が漏れていた、なんてことにもなってしまいます。
記録の目的を理解して、ちょっとしたコツを意識するだけで、夜勤明けの記録の負担はグッと減らせます。
介護夜勤記録の目的や、効率良く記録を書くコツが知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
介護夜勤記録の目的
介護夜勤記録は、夜勤帯の利用者さんの様子や出来事を記録するものですが、目的を理解していないと、ただの苦痛な作業になってしまいます。
ここで、介護夜勤記録の目的をあらためて確認してみましょう。
スタッフ間の情報共有
24時間体制の介護の現場では、日勤帯と夜勤帯で情報を共有しないと、利用者さんへ適切なケアを行うことができません。
夜勤帯に介護士しかいないという施設も多く、ほかの職種との情報共有の手段として介護夜勤記録が重要になります。
夜勤者が退勤後でも、夜間の利用者さんの様子は介護夜勤記録で確認することができます。
適切なケアを継続して行っていくため
介護夜勤記録には、「夜間の利用者さんの様子や心身状態」「利用者さんへ行ったケア」「その後の状況の経過」などを記録します。夜間の利用者さんの状況によってその日行うケアが変わってくるので、適切なケアを継続していくために、介護夜勤記録が重要です。
ご家族との情報共有・ケアの方向性を決める
ご家族と情報共有するためのツールとして介護夜勤記録が必要です。
介護夜勤記録で、夜間の利用者さんの様子や状態をご家族と共有できます。
夜間の面会や宿泊は制限ある施設が多いなか、「夜は眠れてましたか?」「夜は迷惑かけてなかったですか?」と利用者さんの夜の様子を心配されるご家族も少なくありません。
ご家族が日中に面会に来たときにも、介護夜勤記録を見れば、日勤スタッフも夜間の状況をご家族に伝えることができます。
介護夜勤記録は、ケアプランの達成度や現時点でのケアの課題を読み取れる判断材料のひとつなので、ケアプランの見直しや作成のための重要な資料となります。
自分の身を守る
自分の身を守ってくれる証拠となるのが、介護夜勤記録です。
夜間の利用者さんの様子や状態がどうだったか、どのようなケアを行ったかわかるのが自分しかいない場合も、介護夜勤記録が証拠となってくれます。
介護夜勤記録の書き方のポイント
介護夜勤記録の書き方のポイントを確認していきましょう。
記録の基本「5W1H」
記録が苦手な人も、「5W1H」を意識すると、ほかのスタッフやご家族にも伝わるわかりやすい記録を書くことができます。逆に言うと、この視点がないとせっかく書いた記録が伝わりにくくなってしまう可能性があります。
- When(いつ)
- Where(どこで)
- Who(だれが)
- What(なにを)
- Why(なぜ)
- How(どのように)
これを意識するとわかりやすく伝えられます。
主観ではなく基本的には客観的事実を書く
スタッフの主観ではなく、客観的事実を書きます。主観で書くと、スタッフによって記録内容が変わってしまうので利用者さんの正確な情報にならないからです。
主観(自分の意見) | ~だと思う、~だと感じた |
---|---|
客観(誰もが納得する事実) | ~である、~であった |
介護の現場では基本的に、客観的な表現を使用して「客観的事実」を記録します。
主観を書く場合は、事実と分けて書く
介護の現場では基本的には客観的事実を記録しますが、主観を書く場合もあります。状況から判断しなくてはならない、「根拠のある可能性」を書く場合です。その場合は、必ず、事実と分けて書きます。
- 「~であることが考えられる」
- 「~の可能性がある」
略語や専門用語は避ける
介護業界で使われる略語や専門用語は、記録ではできるだけ避けます。記録はご家族の要望があれば開示することになっているからです。ご家族が見てもわかるような記録を書くことを意識すると、伝わる記録が書けます。
介護の現場ではなにげなく使っているけど伝わりにくい、略語や専門用語には以下のようなものがあります。
- 傾眠
- 失禁
- 喘鳴
- 更衣
- せん妄
- 離床・臥床
- 独語
などなど。
ご家族に伝わりにくい言葉はできるだけ避けて記録します。
「です・ます調」か「だ・である調」は、施設による
記録は「です・ます調」の常用体で書くことが基本とされていますが、実際は、働く施設によります。
誤解されやすい表現に注意する
誤解されやすい表現は注意しましょう。先ほども述べましたが、記録はご家族の要望があれば開示することになっています。記録内容を見たご家族が不快に思い、苦情が出てしまうケースもあるので注意が必要です。
職員に対する暴言、暴力行為が見られた
暴言や暴力という言葉だけではあいまいな表現です。何をもって「暴言」という言葉を使ったのかとご家族が不快に感じてしまったケースです。
具体的にどのような様子だったのか、を意識して客観的事実を書きます。
「〇〇〇〇〇(実際に利用者さんが話していた言葉)」と強い口調で話し、拳で職員の身体を叩く行為が見られた
介護夜勤記録の具体的な書き方
介護夜勤記録を書くときの、良い例と悪い例を具体的に見ていきましょう。夜間にありがちな事例でご紹介します。
不穏な様子が見られた
険しい表情で「〇〇〇」と声を荒げて話す様子が見られた
徘徊する様子が見られた
居室とリビングを行き来する様子が見られた
弄便していた
オムツの中に右手を入れており、布団や柵に便がついていた
ベッドから転落していた
ベッドを背に、両足を伸ばした状態で床に座っていた
繰り返しですが、「客観的事実」を書きます。
介護夜勤記録を効率良く書くコツ
メモを取る10秒の時間を業務の合間に作るだけで、介護夜勤記録を効率的に書くことができます。
夜勤明けは、疲れから「思い出す」「考える」思考が低下しています。
「何か書くことあったんだけど何だったかな…」「あれ何時頃だったかな…」と考えるのに時間がかかっている夜勤明けの人がとても多いです。
思い出すのに時間がかかったり、記録することを忘れてしまったりしないために、メモを取る10秒の時間は削らないようにします。
夜勤明けは「思い出す・考える」作業を減らすために、都度メモを取る!
- 時間
- 利用者さんの名前
- キーワード(部位・言葉・行動)
この3つがあれば、「何時だったかな…」「傷ができてたの右手だったかな左手だったかな…」と考える・思い出す作業が減らせて、すぐに記録を書き始められます。
介護夜勤記録はポイントをおさえて簡潔明瞭に!
介護夜勤記録は、ポイントをおさえて簡潔に誰が見てもわかるように書きます。
- 5W1Hを意識する
- 客観的事実を書く
- メモは3つのポイントをおさえて10秒でササッと書く
記録の基本の書き方とポイントをおさえて、効率良く記録を書きましょう。